世界の備忘録

歴史上の忘れたくない事件などをまとめていくブログです。

備忘録その74 ウイグル族に対する弾圧

なんだか世間がざわざわするようなニュースがたくさんで、追いかけすぎたのか疲れてしまいました。ちょっとネットと距離を置きたい今日この頃です。
パワハラの有無、場を和ませるための冗談だった…全部「は?」という感じではありましたが、今の段階で一つだけ声を大にして言えるのは、少し前の記事で見た「書面での契約書なし」ということ。アウトです。
いくら家族でも甲乙関係になるのなら書面で自分の身を守る必要があります。
 以前のブログのタイトルにある「最低限のこと」というのが「契約書の作成」なのですが、まさか現代の日本の大企業がしていなかったなんて…
 
さて今日はこの前のチベット問題とも関係がある…というより中国関係なので関係あるしかないのですがウイグル人に対する弾圧についてです。
 
 
まず、ウイグル人とは…
現在は中国が実効支配している新疆ウイグル自治区やカザフスタン、ウズベキスタン、キルギスなど中央アジアに居住しており、人口は約1千万人、テュルク諸語のウイグル語を話すムスリムである
wikipedia引用です。
 
チベットもそうでしたが、新疆ウイグル地区も清朝の頃から支配下に置かれる状態が続いていました。
中華民国の頃、一時期独立が推進されることもありましたが、1949年から中国共産党が新疆に侵攻し、戦争の末に支配下に入れました。
 
50年代に入るとすぐに漢民族の入植がはじまり、今ではウイグル人よりも数が多いとされています。
 
今ではウイグル族の人権問題などが批判されていますが、それでも事の重大さに比べると報道や他の国からの批判が少ないんじゃないか…?という気がしないでもないです。
 
 
チベット問題が起きた当初、ダライ・ラマの亡命先になったインドなどの支援などがありました。
しかし、ウイグル族はイスラム教徒なのに他のイスラム教国家からの支援という話はあまり聞きません。なぜでしょう。
これにはイスラム教の国々の思惑というか、意図?が隠されているようです。
 
 

www.businessinsider.jp

 

 この記事によると
・中国を批判することによって経済的な報復を恐れている
・自分たちも人権問題についてはあれこれ言える立場じゃない
ということだそうです。
 
 
この人権問題とはどういうことかというと、ウイグル族の人々を逮捕して収容施設で拷問・洗脳などを行ったり、最近では顔認証のシステムを使って行動を監視するなどのことを言います。
少しでも自分たちの意に反する人は逮捕して洗脳したり拷問したりする対象になる、ということですね。
 
似たような監視体制がイスラム教の国でもある、もしくは過去にあったので、中国を批判してもそれは結局自分たちに返ってくることになる、というのを恐れているようです。
 
また、トルコがこの弾圧について反対の声を挙げていますが…これといって解決策があるわけでもないようで根本的な解決には程遠い気がします。
そもそも漢民族が多く暮らしている今の時代に合った根本的な解決って何なのかということから考えなければならない気がします。
 
 
香港や、最近ではロシアでも(地味にびっくり)デモがあったというニュースがありましたが、声を挙げられること、権利があることの幸せをもう一度考えたいなと思いました。
 
何度も思うことですが、力で抑えつけた方がリスクが少ないと思うんですかね…?
後々国際社会からの批判や信頼を失くすことの方が損失が大きそうですが…
大国は怖いものなしということでしょうか。虚しいです。
 

 他の記事によると、イスラム教だけではなく、様々な宗教が弾圧の対象になるかも?(もしかしたら既に少しずつ進められてるかも…?)ということで、心配です。

自分が幸せだと思う方法で生きることを、生まれ育った国に邪魔されることほど不幸なことってない気がします…

www.newsweekjapan.jp

 

 

ちょっと寄り道その⑫ 『デタッチメント~優しい無関心』

今回の参議院議員選挙をツイッターなどで追いかけていたのですが…
なんだか虚しい気もするし、こんなもんか…という気もする、そんな結果でした。
 
私はどうしても投票できなかったので(在外公館での投票も手続きがややこしく…)、投票率についてとやかく言える立場ではないですが、それでももう少し自分のこととして考えるべきだよなぁ、と思いました。
 
生まれ育った国として色々と心配です。
 
 
さて、週末の息抜きに(平日も観てるけど)映画を観ました。
『デタッチメント~優しい無関心~』という作品で、日本でももうDVDも出ていますね。

f:id:blueblue228:20190722140018p:plain

『戦場のピアニスト』のエイドリアン・ブロディが出ていて一見ロビン・ウィリアムズ主演の『いまを生きる』みたいな温かい教師のお話かな…と思いきや、全く違いました!
 
 
暗い過去を持つ非常勤講師のヘンリーが急に転がり込んできた売春婦のエリカや、崩壊しきったクラスの生徒たちと接する中で、「無関心」が変化していく…というものなのですが。
 
 
色んなレビューで言われていることですが、邦題の「優しい無関心」っていう部分、要らないです。
この副題のせいでなんだか柔らかいイメージになってますが、実際見てみるとすごく重いです。
生徒たちのワルさ加減というか、どうにもならない感じ…
これもし自分が教師だったら…と想像してぞっとしてしまいました。
 
 
関わらないという「めんどくさくない」状況を選んできたヘンリーが、不可抗力で飛び込んでくる人々とかかわっていく中で「めんどくさい」けどそれをしのぐ喜び?幸せ?もあるということを見せてくれてるんじゃないかと感じました。
 
 
なんとなく思い出したのは少し前に(今もかな?)話題になっていた、不登校ユーチューバーのこと。
もちろん彼とこの映画の登場人物に何か共通点があるということではないのですが、見ていて思ったのは、「色々なものを避けた上で得た自由」ってその後にどこかでしわ寄せが来たり、ヘンリーのように慢性の寂しさに苛まれることがあるんじゃないかなぁと思います。
まぁその寂しさを経験するのも覚悟の上かもしれませんが。
 
私が偉そうに言う必要もないですね。
 
 
それにしても、本もそうですが、良い映画もいっぱいありますね。
全然時間が足りないです。少しでも早く仕事を片づけたいところです…←
 

ぼやき~最近の日韓関係~

どんよりしてますが涼しい、韓国は水原です。

マンションの6階という微妙な高さに住んでいるのですが(韓国では低層)、窓からこんな緑に囲まれた韓屋造りの建物が見えるのが気に入っています(肉眼だともう少しよく見えるんですけどね)。

f:id:blueblue228:20190720110819j:plain

 

今日は韓国に住んでいる身として、肌で感じる韓国の空気について書いてみようと思いました。あくまで私が感じたことです。

 

 

 

きっかけは「今、韓国旅行をすることは危険か?」と知人に聞かれたことでした。

 

そう思うのも無理はない、連日の報道…

不買運動をしている、デモがあった、などの事実だけではなく、めっちゃ尾ひれついてるなぁと思うものも多いです。

よくあるのは「それは今始まったことじゃない」というもの。

悲しいけど忘れちゃいけないのは、不買運動がなかった時も政治の面で仲良しこよしな国ではなかったということです。

 

話が逸れましたが…

その知人には、私が思うに、危険ではないと答えました(もちろん海外に行く際の最低限の注意は必要です)

 

今回の不買運動は日本政府、経済界に対する抗議であって、日本人を「排除」するものでは決してないからです。

 

私も普通にニコアンドのセールに行きましたし、地下鉄で日本の文庫本を読んでますし、日本の缶ビール持って日本語を喋りながらスーパーをうろうろしてますが、誰も見向きもしません。

 

韓国人の友達に会いましたが、このことについて発言したのは「ユニクロ空いてるね~」だけ。

「こういうことがあっても友達だよ!」とか「危なくなったら言ってね!」の話すらも出て来ない、人対人の付き合いにはなんの関係もない感じでした。

 

京都アニメーションの件でも中国や台湾の人は悲しんでるけど韓国人は悲しんでいないと主張するツイートなども見かけたのですが、全然違います。他の国のファンと同じように悲しんで、支援と追悼の意を込めてアニメグッズを買い、思い入れのあるアニメを見ています。

アニメ大好きの韓国人の友達はどや顔で「オタクに国境はない」と言っていました。

 

 

もちろん、用事がないのに日本大使館に近付くことはやめた方がいいかもしれませんが、普通に旅行している分には今回の「不買運動」と関連した危険はないと思います。

それでもたまに変な考えを持った悪い人に出て行け!などと叫ばれた、という例もあります。これは今回の問題に限らず、今までずっとあったことです。だからといって許されるものではないけど、これをもって今の韓国が危ないというのはちょっと違うかな?という感じです。

 

両国一歩も引き下がらない感じからして、この問題は長引きそうな予感がします。

でも、だからといって韓国で暮らす日本人や日本で暮らす韓国人に危害が及ぶなんてことにはなっちゃいけないし、ヘイトスピーチが助長されるなんてことはあってはいけないと思います。その点で報道の責任は重大ですね。

たまには第三国が報じる日韓関係のニュースをみておくのもいいかもしれません。

 

思い通りにいかないからといって「排除」したり、恨んだりするのでは何も解決しません。政府同士がしっかり問題を理解して解決していくべきことだと思います。

(ただ、両国共に外交や報道を黙って見守っていられるほど頼りがいがあるかと言われると、ちょっとどうなんだろう…という感じはします…やたら扇動的な報道などには一度立ち止まって、本当に?と思える力を鍛えたいと思います)

 

備忘録その73 続く戦い~チベット問題その③~

京都アニメーションの事件…びっくりしました。
亡くなられた方のご冥福をお祈りします。
負傷された方やご家族に早く日常が戻りますように…
 
報道が続きそうですが、遺族や関係者の方が傷つくような取材のし方だけはやめてほしいなと思います。
守られるべき人が守られていない感じが最近すごく気になります。
 
 
さて…放火事件もそうですし、選挙や日韓関係など色々気になることがありますが、とりあえず最近のチベット問題についてです。
 
 
一番大きな事件として知られているのは2008年3月の「チベット騒乱」ではないかと思いますが、亡命政府ができてから2008年までの間にもたくさんの事件があり、その度に多くの犠牲を出してきました。
 
例えば1987年のジョカン寺での虐殺事件。
チベットに移住した漢民族が本土へ帰るよう求めた僧侶たちの行進に武装警察が無差別発砲を行い、数十名が亡くなっています。
 
翌年にはラサでの祈祷会で暴動が起こり、数千名が逮捕されたり、殺害されています。
 
そして2008年の騒乱。
チベット各地で起こった暴動です。
 
このブログでも扱ってきたような事件でよく見受けられた
「デモを鎮圧しようとした→デモ隊が暴徒化した」
というような構図ではなく、最初からデモ隊が漢民族や回族の商店などを狙うという、いくら独立を願っていても許されてはいけない行為が行われていたのでした。
 
もちろん全てのチベット人が参加していたわけではないものの、多くの僧侶の扇動?により行われたことのようで、結局中国政府が抑え込むという流れになりました。
 
この2008年の3月というタイミングは、北京オリンピックを見据えたものでもありました。
中国政府が強硬姿勢を取れないだろうということ、そして世界に注目してもらう、という狙いがあったようです。
こう考えるとオリンピックの前後って色んなことが起きますね。全然平和の祭典じゃない…といつも思ってしまいます。
 
 
 
このチベット問題でやはり気になるのは、チベット人VS移住してきた漢族・回族という構図になってしまっていること。
 
問題は政府にあるのに、どうしても漢族のお店や居住地区から攻撃されてしまいます。
漢族の人々がどういう気持ちで、どういう経緯で移住してきているのかはわからないのですが、「自分たちの土地にしてやる!」という政治的な意図を持った人よりは、生活のためにやって来たという人が多いんじゃないかと推測しています(単なる推測です)。
 
糾弾されるべきはそもそもの政府のチベットに対する対応だったり暴動が起きた時に無差別発砲するなどの対応なのに、そういう根本から世界の目を逸らせてしまうのは逆効果じゃないかな、と思います。
 
実際2008年の騒乱に対する各国の反応は、台湾などを除いて中国のチベット統一を支援したいという意見が多かったようですし…
鬱憤が溜まるのも十分理解できますが、平和な方法をなんとか探してほしいところですね。

備忘録その72 法王の亡命に伴う犠牲~チベット問題②~

ネットで「ふつう」の歯ブラシを買ったのに「やわらかめ」が届きました。
我慢して使おうにいもなんとなく譲れない部分だったので返品処理をすることにしたんですが、販売している会社が電話に出ず、めんどくさいことになっております。
 
 
さて今日は…
 
チベット問題のうちダライ・ラマ14世の亡命について書こうかなと思ったのですが、ダライ・ラマ法王の公式サイトがあるのですね。
 
ここにある生い立ち~亡命の経緯を参考にして、自分がわからないところは情報を足して書いてみたいと思います。
 
 
世界一有名な難民とも呼ばれているダライ・ラマ14世ですが亡命したのは1959年3月、彼が24歳の時のことでした。
 
経緯を簡単に説明すると、ある日中国軍からダライ・ラマ14世に武装警備隊なしなどの条件をつけて観劇に招待します(招待しておいて色んな条件をつける…怪しすぎる)
これによって中国側がダライ・ラマ14世を拉致しようとしているという疑念が生まれます。
 
これを食い止めようとしたチベットの人々はダライ・ラマ14世が宮殿から出られないように取り囲みます。
中国の人民解放軍はもちろん解散を要求しますが三日間も小競り合いが続き、このラサだけで10000人以上の死者が出たと言われています。
 
これによって大混乱に陥ったラサですが、ダライ・ラマ14世は神託官に助言を求め、国を離れるよう言われます。実際に宮殿は砲撃を受けていました。
そしてインドへ亡命し、臨時政府を樹立します。
 
インド政府にはラサでの混乱が起こった時に既に支援を求めていました。
法王について80000人の市民もインドへ亡命したと言われています。
 
私は、この辺りの部分がちょっと引っかかっていました。
法王が混乱の中で国を置いて亡命してしまったら、残る人々はどう思うのか、という部分です。
 
 
でもここがやはり宗教の感覚がない私の勝手な考えだったようです。
当時は自由な地でその宗教や伝統を守るということが優先だとされ、ダライ・ラマの亡命と亡命政府の樹立に関しては一定の評価があるようですね。
その後何度も帰還を望む声が上がってもいますが、亡命政府批判というのとはちょっと違うようです(この辺りはちょっとあいまいです)。
 
 
それにしても受難の国というか…受難がない国はないかもしれませんが、戦いに参加する民衆の数も、犠牲になった人の数もおびただしいな、という感じがします。
詳しく書きませんでしたが毛沢東が行っていた58~61年の大躍進政策はチベット地域でも行われていて、農業集団化によって餓死者も多く出ています。
そんな状況で何万人も町に出て戦ったそのエネルギーを考えるだけで、彼らにとってチベットの地や宗教、法王の位置づけというのがよくわかります。
 
 
次回は2000年代に入ってからのチベット問題について、考えてみたいと思います。
 

備忘録その71 大国からの独立を目指して~チベット問題その①~

香港ではまだデモが続き、昨日も警察との衝突があったようですね。
小規模ですが、その分過激になっているみたいで、警察側の負傷者も多く出てるのが気になります…
政府に「暴徒」というレッテルを貼られ、その証拠として警察の負傷者が多いと心証や立場が悪くなると思うので…
どうかどちらも冷静さは失わないでほしいと思います。
 
 
さて、今日はチベットに関連することです。
 
まず確認しておくべきこと
・長い間清の支配下にあったチベットは清の崩壊と共に独立のチャンスを得ました。そして1914年にイギリス、チベット、中国(当時の中華民国)が参加したシムラ会議という会議でチベットとイギリスの間で独立に同意があったということ、中国はこの時署名しませんでした。
なんとなく先が読める展開ですね。
 
その後も1700年代の清による分割の通り、チベットの国土の一部(アムド地方、カム地方)は中国の支配下に置かれたままでした。
 
中国共産党が政権を掌握してからは、他の地域と同じようにアムド地方やカム地方の改革を進めます。
具体的には宗教を排除しようとしたり、土地を取り上げて漢民族の人々を入植させるなどでした。
これにチベット人が反発し、チベット動乱が始まります。
 
 
チベットに住むチベット人やモンゴル人などは抵抗します。
しかし、軍の規模が違いました。
多くのチベット人が虐殺されたり、投獄されます。
 
また、抵抗は長期化します。カム地方で1956年に始まった反乱はおよそ二十年続き、60年代までに全体で8万人以上の亡命者を出しています。
 
 
2000年代に入っても騒乱は続いていますが、既に中国によってかなりの近代化が進み、人口もチベット人の定義によっては漢民族の方が多いようで…(T. マーシャル『恐怖の地政学』による)
反乱は断続的にあるとは思いますが、これからの独立となると厳しいものがありそうですね。
 
 
 
超大国との昔からの支配関係から多くの犠牲を生んでしまった例というか…
中国のサインさえあれば…とどうしても過去を恨めしく思ってしまいますが、これが歴史の興味深いところでもあります。
 
 
ダライ・ラマのことや2008年の騒乱など色々あるのでチベット問題はもう少し続きます。
その後ウイグル族のことも書きたいなぁと思っているところです。
その②へ続く。
 
 
参考にしたもの
T. マーシャル『恐怖の地政学』 さくら舎
世界史の窓
 

備忘録その70 テッド・バンディの連続殺人事件

70番目の備忘録です。なかなか時間が取れず更新のスピードは落ちる一方ですが…
細々と続けたいと思います。
 
 
さて、今日は…
海外のニュースや殺人事件などを扱うバラエティ番組などで扱われているのを見たことがあった、テッド・バンディの殺人事件についてです。
 
 
彼はアメリカの犯罪史に残る連続殺人犯と言われています。
自白しただけでも30名の被害者がいます。実際はそれ以上と言われています。
 
しかも、30名の殺害は1974年から78年の間に行われており、途中刑務所にいながらも脱獄して殺人事件を起こすという「殺人鬼」っぷりです。
どんなサイコパスなのかと思いきや―確かにサイコパスではありますが―若くて容姿端麗で頭脳明晰な法学部生でした。
それを武器に女性に近付き(こっそり侵入して…などの手口もありましたが)、暴行ののちに残酷な方法で殺害する、という手口でした。
 
 
中には暴行や誘拐はされるものの逃げ出すなどして、生き残る女性もいたのですが、その女性たちの証言で似顔絵が作られたり、車両の情報などから警察から目をつけられるようになります。
 
後でわかることですが、ワシントン州やオレゴン、ユタ、コロラドなどで既に連続殺人を行っていたテッドは、ソルトレイクシティの近くで75年に逮捕されます。
彼は誘拐されたのち解放された女性の証言で一つの誘拐事件の犯人となり、コロラド州に移されたのち裁判にかけられます。
この頃から警察は彼を連続殺人犯としてマークしていましたがなかなか証拠が出て来ない。
 
テッドはテッドで口では否定していながらも、弁護士や裁判長などに歯向かうなど心証を悪くするなど一見矛盾に見える言動で目をつけられていました。
裁判中なのに逃走したり(すぐ戻る)、大がかりな脱獄もします。
 
そして脱獄して向かったのはフロリダ。
現代だったらきっと情報が回ってすぐ捕まっていますが70年代ということもあってバレることなく飛行機にも乗っています。
 
そのフロリダでフロリダ州立大学の女子寮に忍び込み、三人を殺害、複数の女学生に怪我を負わせます。
 
 
お金が底を尽きてきて、車を盗んで逃げていたところを警察につかまります。
裁判はフロリダで行われることになり、彼は国選弁護人がいるにも関わらずほとんど自分で弁護をします。
 
彼は検察側との司法取引に応じることもできる状態でした。
つまり、一部の罪を認めることで懲役刑となり、死刑を免れることができた。また、そうした時間のかかる手続きをしていく中で証拠がなくなったり、証人が亡くなるということもありえるため、そこから無罪に向かうこともできるというものでした。
 
しかし、テッドはこれを最終的には受けませんでした。
なぜなら、有罪を認めることが苦痛だったから。
とにかく有罪という目で見られるのが嫌だったのです。
(ならなぜ殺したんだと思いますが、そこがサイコパスたるゆえんなのでしょうか)
 
彼は一つの事件の有罪も絶対に認めない姿勢を貫きます。
 
結局被害女性の体に残った歯型や、目撃情報などによりフロリダだけの五件の殺人と住居侵入などで有罪となり、電気椅子での死刑が確定しました。
 
 
裁判中の結婚など色々と騒がせたテッドでしたが、42歳で死刑に処されます。
確定死刑囚となってからは、自分の犯罪というよりは第三者の犯罪を分析するかのように事件について語ることもあったようで、それをドキュメンタリーにしたものも最近出てますね。
 
 
潔白を主張しながらも脱獄してまで殺人事件を起こすという…私には病的な殺人犯だとしか表現できませんが、どうなんでしょう。
 
彼が大人しくコロラドで誘拐事件の罪を認めていたらそれこそ数年後に出所してより多くの犠牲があったかもしれないと思うとぞっとします。
その後のフロリダの犯行も女子大生のことを思うと心が痛いですが…
 
写真や映像も残っていますが、裁判中に自分を弁護する姿などに魅力があったのか、当時は女性ファンまでいたくらいだったそうなので、その魅力を他のところに使えば…と思ってしまいますね。
 
週末にネットフリックスで 『Extremely Wicked, Shockingly Evil and Vile』(原題)を観ました。
テッド・バンディをシアトルにいた彼の彼女であるエリザベス・クレプファーという女性の視点から描いています。
日本ではまだ配信されていないようですが、話題作のようなのできっともうすぐかな??と思います。
 
 
 
一人の男性を信じようとしていた女性の物語としても面白いですし(どこまで本当かはわかりませんが)、ドキュメンタリーっぽい淡々とした部分もあって(監督がテッド・バンディに関するドキュメンタリーも撮っている人です)おすすめです。

ちょっと寄り道その⑪ ミーガン・ラピノー選手のインタビュー

アメリカの女子サッカー代表のミーガン・ラピノー選手のスピーチやインタビューを見ていたのですが…

カッコいいですね。

男子サッカーの選手との賃金格差是正を訴え続け、差別的な政治を行うトランプ大統領のいるホワイトハウスには行かないと言ったことでも話題になっていた選手です。

 

下に貼ったインタビュー映像の中にこんな部分があります。

 "you're harking back to an era that was not great for everyone -- it might have been great for a few people, and maybe America is great for a few people right now, but it's not great for enough Americans in this world,"

((大統領はMake great America againと言っているが)あなたが懐かしんでいるその時代は全ての人々にとってよかったわけではありません。一部の人にとってよかっただけで、今のアメリカも同じ状況です。しかしそれは世界中にいる多くのアメリカ人にとって良いわけではないのです。) 

 

以上CNNのインタビューの一部で、文字起こしされたものを私が翻訳をつけました。

もう翻訳文出回ってるとは思いますが…。2分40秒辺りからトランプ大統領へのメッセージを話しています。

記事になっているものはこちらを参照https://edition.cnn.com/2019/07/09/politics/megan-rapinoe-anderson-cooper-trump-cnntv/index.html

 


Rapinoe's message to Trump: You need to do better for everyone

 

これはどこの国にも言えることですね。

もちろん完璧な政治なんてないのかもしれないけど、今目指しているのが誰にとっていい国なのか、というのは考えるべきです。

それが一部の政治家や力のある人だけが潤う国だと独裁に近付いていくわけで…

 

 

私はミーガン選手と似た意見ですが色んなバックグラウンドを持つ人々が幸せに暮らせた方がいいと思います。

 

それにしても、こんなに堂々とホワイトハウスに行かない!と言う→それを大統領に「勝ってから言え」と言われる→本当に優勝する…ってカッコ良すぎですね。

 

文化が違う、システムが違うと言えばそれまでですが、今の日本と比べると日本はまだどうしても声をあげることに臆病になってしまっているなぁという気がします。

私も含めて。

 

 

こういった若い人から刺激を受けて、自分が違和感を感じたら、大きな流れに必ずしも乗らなくてもいい、ということがもっと広まればいいなぁと思います。

大きな流れの中にいても、その流れがどこに向かっているのか、内側からはわからなかったりしますしね。

 

こちらのスピーチでは多様性を認めることを訴えています。

案の定…ですが、敵はかなり増えています。それも覚悟で発信している姿はかっこいいです。


Megan Rapinoe speaks at World Cup championship parade

備忘録その69 変化と保存の難しさ~パプアニューギニアでの魔女狩り~

すいてる時間にスーパーに行くと、私が豚肉を手に取るだけで売り場のおばちゃんたちが「おいしそうなの選んだわね、えらいえらい」みたいな感じでほめてくれるので気分がよくなります。
試食も「もっと食べなさい」っていっぱいくれるので買い物が楽しいです笑。
 
 
さて今日は韓国は「伏日」といって夏に三回ある暑気払いにサムゲタンを食べる日で、うちでも前もって買っておいたサムゲタンを食べる予定です。
高麗人参やなつめなどを入れたり、鶏にもち米詰めたりと面倒なので、外食するかレトルトパウチのサムゲタンが人気です。レトルトでも骨付きで一羽分入ってて、すごいなぁといつも思います。
 
 
さて、サムゲタンの話はこれくらいにして…
 
 
私がずっと興味がある国の一つにパプアニューギニアがあります。
言語学を勉強していた時にどんな授業でも一度くらいは話題に上るのがこのパプアニューギニアなのですが、それは800以上の部族があり、言語もその部族ごとに違うと言われているのです(野瀬2014参考)。
 
言語が違えば考え方も文化も少しずつ違うので、実際どんなものなのか見てみたいというのもありますし、800の部族がそれを現代まで維持しているというのがすごくて、これからもできるだけそれが保存される方向でいってほしいなと思っていたのです。
 
 
しかし、文化が変わってしまうような外部との接触もなかったということは、現代の倫理観や科学の基礎的な知識では到底理解できないような風習がそのまま残っているということもあるわけで…
 
 
全ての部族ではありませんが、例えば「エンガ」という地区では2019年になった現在でも、男性の死亡を一人の女性のせいにする、「魔女狩り」が行われているそうです。
 
 
魔女とされた女性は特に死亡した男性の家族というわけでもなく、もちろん殺していないのですが、村中の人々に残虐な行為をされ、最後は火あぶりにされて殺されてしまいます。
 
この魔女狩りには、人の死や不幸を必ず人為的なものと考え、自然でやむを得ないこともあるという考えがないという背景があるようです。
 
これに対しては国際的にも警鐘を鳴らしているようなのですが、まだまだ魔女狩りと呼ばれる殺人は続いているようです。
 
 
こういった残虐な殺人事件は私も非難されるべきだと思いますし、この件に関しては早く解決してほしいと願っています。
 
が…こういった非科学的な知識による悲劇っていわゆる現代化に向かう中でどの国も通ってきた道と言われればそうでもあり…それを先進国や大国が外からやいやい言って自分たちの物差しを当てて無理矢理変えてしまうと、それはそれで副作用がありそうな気もするんです。
 
魔術を信じている別々の部族をいっぺんに変えることも難しいですし、そうして部族同士科学的な知識に差が出るとパプアニューギニアのバランスが崩れるんじゃないかとか…そうすると言語も変わってくるかもしれないし…
 
慎重な助言?支援?と長期的に内側からの変化を促すことが必要なんじゃないかな、と思うんですが、これもやはり言うが易しですね…
 
 
参考にしたもの
野瀬昌彦(2014)、800以上の言語が話されるパプアニューギニア―変わりゆくアメレの村で―『Field Plus』
AFP通信『20歳女性「火あぶり処刑」で男女二人を逮捕 パプアニューギニア』2013年2月19日
AFP通信『環境の変化を黒魔術のせいに、多発する現代の魔女狩り パプアニューギニア』2019年2月2日
 

備忘録その68 子どもの犯罪~ジェームズ・バルガー事件

今日は久々に会う友達とランチに行ってきました。
おいしいもの食べて、喋って、楽しかったです。
 
個人差あると思いますが、韓国人の友達と会う時は前日や当日に「会おう!」ってなることが多い気がします。
 
 
さて、今日は1993年2月にリバプールで起きた誘拐・殺人事件についてです。
 
リバプールのショッピングモールに母親に連れられてきた2歳の男の子ジェームズは、母親がお会計する間、店の外で待っていました。
 
その男の子を10歳の男の子2人、ジョンとロバートがショッピングセンターの外に連れ出します。
監視カメラにジェームズの手を引いた少年の姿が映っているのですが…当たり前ですが兄弟のように見え、不自然ではありません。
 
その後怪しいと思って声をかけた通行人はいたものの、ジョンとロバートは「迷子を警察に連れて行く」、「けがをしたから警察に行く」などと言ってごまかします。
 
 
その後ジェームズに残虐な暴力を加え、ひん死の状態で線路の上に放置し、ジェームズは列車に轢かれて死亡します。
 
 
イギリス国内で大きな問題になったのは言うまでもなく、10歳ながら実名や逮捕後の写真も公開されました。
 
2人は貧困家庭に育ったということですが、貧困層だからこんな事件を起こすということでもないため、情状酌量はなしでした。
事件の残忍さから終身刑を求める署名運動などもありましたが、最終的には18歳で釈放されています。
 
 
それと共に戸籍が抹消され新しい戸籍が与えられるなど、加害者を過剰に保護しているという批判も集まっています。
また、この事件の犯人のうち一人は、成人後にも児童ポルノ所持などで逮捕されたりしているようで、その度に政府も批判の的になっているようです。
 
 
最近日本でも中学生が同級生を殺害するという事件も起きました。
もちろんこの誘拐殺人とは性質が違いますし、一括りにできるものではありませんが、裁判やその後の更生、実名報道のことなど、考えるべきことはたくさんあるんだな、と思わせてくれる事件でした。