世界の備忘録

歴史上の忘れたくない事件などをまとめていくブログです。

ちょっと寄り道⑩ 『戦争は女の顔をしていない』

少しずつ読んでいた『戦争は女の顔をしていない』ですが、やっと読み終わりました。
 
韓国語版で読んだので、余計に時間がかかりました。
日本語母語話者としては韓国語で本を読むのは全部ひらがな+分かち書きで書かれたような難しさを感じます。
 
 
ウクライナ出身のベラルーシ人であるスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチの作品で、2015年のノーベル文学賞を受賞しています。
 
取材記録というか、インタビュー記事に近いのですが、著者の脚色は一切なく(提示する順番などはもちろん決めていると思いますが)、それがまたドラマチックな戦争フィクションより数倍読み応えがあるというか…重いし、読みやすいかと聞かれると読みづらいです(韓国語だったからなおさら?)。
でも途中から読まなきゃという義務感が芽生えます。
 
 
インタビューした女性によっては数行で終わったり、逆に何ページも続いていたり、その内容も「すごい気迫だなぁ」と思わせるものから、「相当な恐怖だったんだな」と思わせるものまでそれぞれに物語があります。
また、もちろん「別れ」や「寂しさ」なども十分に感じられますが、身近な人の死とか、生き別れになるとか、戦争と聞いて思いつくような残酷さとはまた違った一面を見せてくれています。
 
 
 
うまく説明できないのですが、意気込んで戦争に行くというより、「これから行くけど、チョコレートってあっち行っても食べられるかな?」みたいな無邪気さが垣間見えるところが余計に残酷な気がしました。
 
負傷兵を運ぶために戦闘の中を往来しないといけない時は無意識に自分の魅力だと思っていた脚や顔をかばってたなどのエピソードも平凡な女の子の一面が見え隠れしていてずっしり来ます…
 
 
 
この作品はドイツと戦うソ連の少女兵の記憶を集めたものでしたが、読んでいるとこれがどこの戦争とか、誰が悪いとかは気にならなくなります。
これがもしドイツの軍隊の話でも、どの時代のどの戦争でも、同じように重く、残酷だったと思います。
かといって戦争は男性だけがやればいいとか、そういうことでは決してありません。
男性だって恐怖を感じ、その人や家族の人生が一変してしまうという点では同じです。
 
 
頭の中ごちゃごちゃですが、戦争ってこういうことか。というのがひしひし感じられる作品です。おすすめです。
 
内容は重いですが、戦争ならではの心臓に悪い描写という点ではいくらか読みやすい…?かなと思います。
同じ著者なら『ボタン穴から見た戦争』の方が残酷な場面の描写が多く(一度挫折してます)、彼女の作品を読むならまずこちらを読むのをおすすめします。
 

 

戦争は女の顔をしていない (岩波現代文庫)

戦争は女の顔をしていない (岩波現代文庫)