世界の備忘録

歴史上の忘れたくない事件などをまとめていくブログです。

ちょっと寄り道その⑥ 光州事件を考える

昨日は光州事件から39年が経った日でした。

 

光州事件とは…1980年5月18日から27日にかけて韓国南西部・光州で起きた民主化を求める民衆による蜂起です。

 

 

39年というとだいぶ昔のことのような気がしますが、それでも1980年です。

日本で80年について調べると、竹の子族の流行、松田聖子のデビュー、王貞治の現役最後のホームランなどなど、平和な感じがします(もちろん大小のごたごたはあったことと思います)

 

でも韓国では、大統領が暗殺された余波で戒厳令が敷かれ、学生や市民が民主化に戒厳令の解除や民主化に向けたデモを繰り返す、そんな年でした。

 

そんなさなか、韓国南西部の光州市という町で学生の暴動を鎮圧するために軍が投入され、多くの学生が負傷、連行されます。そして学生以外の市民のデモが行われた際、軍は市民に向かって発砲し、多くの死者が出ました。

 

デモならソウルでも起きていたはずなのに、なぜ光州だったのか。

それは当時の軍部のトップである保安司令官・全斗煥(東部出身)が野党側の政治家(金大中を含む)を軟禁していて、全羅南道出身の金大中の釈放を求める声が光州で特に大きかったからと言われています(韓国の地域感情は結構根強いものがあって、東部の慶尚道が西部の全羅道を蔑むような視線は今だに一部であるようです)

 

当時は全斗煥によって情報が漏れないように報道規制がされていて、韓国国内の人々はこの事件について全然知らなかったと言います。

 

事件の説明は色んなところに書かれているのでこれくらいにして…

 

いくつか観たり読んだりした光州事件を題材にした作品を紹介したいと思います。

 

①光州5.18(原題:華麗なる休暇)

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韓国版ポスター(画像お借りしています)

2007年に公開され、日本でも上映していました。私は映画館で観たのですが…

残酷なシーンも多いのですが、主人公の弟が学生ということもあって、学生運動としての光州事件についても深く考えさせられますし、市民の怒りもひしひし伝わる、悲しい作品です。

当時の評価では若干史実とずれたところ(より残酷に見せるための演出があったということのようです)もあるということですが、それでもこんな戦いがあったということを知るには十分すぎる作品でした。

ちなみに衝動買いして韓国版のDVD持ってます。

 

②タクシー運転手 約束は海を越えて

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主演のソン・ガンホさんの演技はいつでも素晴らしい

韓国では2017年、日本でも18年に公開されていましたね。

ドイツ人記者を乗せてタクシー運転手が光州に向かい事件を目の当たりにするという作品で、大ヒットしていた作品です。

一人の市民の視点で見ているという点で怒りや悲しみ以外にも、色々考えさせてくれる、そんな作品でした。

 

③ハンガン著『少年が来る』

事件と接した様々な人々がオムニバス形式で描かれているのですが、事件を多面的に見せてくれるのと同時に、やりきれなさや理不尽さ、事件後のトラウマなど細かいところまでしっかり伝えてくれる小説です。邦訳もあるのでぜひ。

 

少年が来る (新しい韓国の文学)

少年が来る (新しい韓国の文学)

 

 

 

光州の市民の方々は、その後の噂や偏見―北朝鮮が後ろについていた―によって二度傷つけられることにもなりました(これについてはのちに公開された機密文書で否定されています)。

また、今年になって全斗煥が裁判のために光州を訪れたり、当時「発砲」ではなく「射殺」命令を出していたことが明らかになるなど、ようやく動き出した部分もあります。

 

少しでも早く、全ての真実が明かされ、犠牲者遺族の方々やなんらかの形で被害に遭った方の心の負担が少しでも減りますように。

これは過去に起きた全ての悲劇的な事件に言えることですね。