世界の備忘録

歴史上の忘れたくない事件などをまとめていくブログです。

日々の疑問その① 自爆テロってなんで起きるの?

スリランカで恐ろしい事件が起こりました。
やっぱりテロってなくならないのか…と落胆気味でニュースを観ていました。
 
事件の詳細についてはまだ調べられていないので後にまとめるとして…
今はとにかく犠牲になった方のご冥福をお祈りし、負傷者の方の快復と、スリランカが早く安定を取り戻すことを祈ります…
 
 
今日は特定の事件ではなく、テロってなんで起きるの?という怒りにも似たざっくりした疑問からもう一歩入口を狭くして”自爆テロってなんで起きるの?”ということを考えてみたいと思います。
 
 
今回のスリランカでのテロも自爆テロでしたし、よく記憶に残っているところだとアメリカの同時多発テロなども自爆テロでした。
 
 
今回調べてみるまで、私が持つ自爆テロへのイメージというか、狙っている効果は以下の三つくらいでした。
①より強いインパクトと恐怖心を与える
②市民に紛れることによって犠牲が増える
③殉教を熱望している
 
 
まず自爆テロの前にそもそもテロの目的とは何か、を調べてみると①支持者の獲得と②敵対者の行動を変えること
とされています。(Robert Pape『Dying to Win』より)
 
その中でも自爆テロは敵対する相手に大きな損害を与え、恐怖心を植えつけ、一般人を巻き添えにすることで世論の批判を浴びることになる。
それでも自爆テロを起こすのは、そのテロリスト集団が脆弱な立場にあるから、だそうです。
 
私が持っていたイメージのうち①、②は大体当たってますね。
でも脆弱な立場にあるということまでは考えていませんでした。ちょっと考えたらわかる気もしますね。優位な立場にいて、財政的や目的遂行のために困っていることがなければ恐怖心を与えたり支持を集めようとする必要もないですしね。
 
 
では③の殉教というのはどうでしょう? これはテロが宗教を背景としているということが前提なのですが…
これは明確な否定ができるかわかりませんが、必ずしも宗教が自爆テロの背景ではないという点(1980年~2003年に起きた自爆テロはイスラム系組織によるものよりも、スリランカのタミル・イーラム解放の虎によるものが多かったそうです)や、
この記事で紹介されているhttps://ippjapan.org/archives/2539 ヒズボラの少女自爆テロリストの遺書の分析のように、宗教だけじゃなくナショナリズムや攘夷感情も見られるため、完全に殉教への熱望だけとは言えないなと思いました。
 
また上の記事では「危機感」にも言及しています。
 
”自分の国<自国>、自分の家族など愛する人々が暮らす<故郷>、宗教的な<聖地>などの領土が、外国の勢力や異教徒、もしくはそれらと結託した「売国奴」によって侵略・占領・支配されているという危機感である。そのため、「侵略者、占領者、売国奴を打倒し、駆逐する」という強い攘夷ナショナリズム感情が沸騰する。”
 
 
でもこれを読むと、この思想そのものは否定されるべきものではない気がします。
一言で言えば愛国心なわけで、これが無差別に色んな人を巻き込むから国際社会から批判され、テロリスト=悪になるんですよね。
テロリスト=悪というのを否定する気はありませんが、特定のテロ事件に対して「そんな感情があったんだ、大変だったな」という同情や、それによって社会の動きが変わって称賛する人がいるのも確かです。(上に紹介した記事では五・一五事件などを挙げています)
 
 
じゃあどうしたらいいのか。
やっぱり色んな事件を知って、背景を正しく理解して、批判するべきところはして、もちろん自分の身を守ることは徹底して…ということくらいしかないんですかね。
うーん。
 
もやもや。
 
 
ただ一つ声を大にして批判したいのは、攘夷運動のような性格を持つ事件(これを評価しているわけでは決してありませんが)とボコ・ハラムなどの過激派組織に見られる少女たちを拉致して自爆犯にするというとんでもないテロ事件は完全に区別されるべきということです。
後者は本当に許せないので、また機会があればまとめたいと思います。
 
 
上に紹介した記事で参考にされていたRobert Pape博士の”Dying to Win”がかなり面白そうなのでゆっくり読んでみたいです。
 

 

Dying to Win: The Strategic Logic of Suicide Terrorism

Dying to Win: The Strategic Logic of Suicide Terrorism

 

 

 
参考にしたもの
2017年12月15日 小川忠 自爆テロはなぜ頻発するのかーイスラーム原理主義との関係からーhttps://ippjapan.org/archives/2539
Robert Pape, Dying to Win, The University of Chicago Press, 2005