世界の備忘録

歴史上の忘れたくない事件などをまとめていくブログです。

備忘録その11 セウォル号沈没事故

4月16日に五周忌を迎えたセウォル号沈没事故についてです。

事故と呼ぶとなんか違和感があるのですが…事件のほうがいい気が…

一応ここでは広い意味で事故と呼びます。

 

セウォル号とは?

韓国の大型旅客船で清海鎮海運という会社の所有するものでした。

当時は仁川から済州島に向かって航海をしていました。

 

翌朝8時49分、朝鮮半島西南部の沖合にある孟骨水道(メンゴルスド)というところを通過する際に急な旋回を見せ、さらに北に旋回した際に船体が傾き、何かにぶつかったような音がした後、水が入ってきたそうです。

 

9時前までには乗客からの通報が何通も入っており、船からも遭難信号や救助依頼を送っていました。

その後、船は横倒し状態となり、最後には逆さ状態になり、沈んでいきます。

その結果乗員・乗客299人が犠牲となり、五年たった今でも5人の行方不明者がいます。

 

という「事故」の概要なのですが、自然災害や単純なミスによる「事故」ではありませんでした。

 

まず事故が起きるきっかけとしては船の点検問題などはもちろん、過積載や海流の急な場所での急激な旋回など、防げたものがたくさんありました。

 

また、多くの修学旅行生が乗っていた船内で、船が傾いている時に

「救命胴衣を着てその場で待機してください」という案内が何度も流れます。

高校生たちはそれをそのまま聞き入れ、大人しく待つことになりました。

この待っている間に撮った彼らの様子はニュースなどにも流れ、現在も動画サイトで観ることができますが、悔しくなります。

 

さらに、救助活動も遅れました。まず、乗客を置いて、船長らが先に脱出してしまいます。

救助用のクレーンは船会社がお金を出すのを渋ったため12時間遅れての出動、海洋警察の動きがとにかく遅く、民間ダイバーによってはじめて船内に入れた時には事故発生から72時間が経っていました。

政府の対応もめちゃくちゃで、全員助かったと言ってみたり、酸素注入できていると言ったのにそれも嘘、行方不明者の家族が現場付近に到着した時にはまだ現地の捜索本部ができあがっていなかった…などなど

 

韓国社会に政権への批判が一気に集中し、のちにパク・クネ政権打倒へつながる大きな事件となりました。

 

この時期韓国で留学生活を送っていたので、ニュースはリアルタイムで観ていたのですが、遺体ばかりが毎日見つかっていくこの状況が悲しくて仕方がありませんでした。

 

また去年にはこの事件について徹底的に検証した結果をまとめたドキュメンタリー그날 바다(あの日の海)が公開され、私も観てきました。

 

 

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ドキュメンタリー映画그날, 바다のポスター

 

データに関する説明も多く、難しかったのですが、結論だけざっくり言ってしまうと「一度錨が下ろされた痕がある」というものでした。これが海底の岩などに引っかかり、旋回と相まって傾いていった、とのことだったのです。

またこの映画では沈没地点やその後の調査段階などで政府によって書き換えられた情報が多かったことも明かされました。

(映画自体は日本で公開されることはないんじゃないかな…?と思うんですがどうでしょう。犠牲者の家族の執念が感じられるものでした。)

 

 

人はいつでも事故に遭う可能性はあるわけですが、事故に遭っても、知識がしっかりあって備えができていれば防げる犠牲もあると思います。

この事故は知識もない、備えもない、悪知恵は働くの三重苦がもたらした人災だったと思います。

また、韓国社会の安全に対する意識の低さや、政府の汚さ(これはある程度は予想してたけどそれ以上に)について、全ての国民を直面させた事故だったと思います。