ちょうどカンボジア、特にポル・ポト政権のことを調べている時にネットフリックスで見つけたこちらの映画。
ロン・ノル政権が倒れ、クメール・ルージュの支配が始まるプノンペンに暮らす、ルオンという7歳の少女の視点から描かれています。
彼女の父はロン・ノル政権下の軍部の大尉。
この情報だけで展開がわかりそうですが、この映画は誰が誰の味方とか、陰謀がどうとかではなく、あくまでルオンの視点から見たカンボジアが描かれています。
だから政治的な背景などはほとんど出て来ず、ただただ翻弄される子供たちにフォーカスされていて、歴史を学ぶ、というよりは間違った支配の怖さをストレートに伝えてくれます。
何も知らない状態でこの映画を観ると、きっとこの頃のカンボジアについて調べずにはいられなくなると思います。
※以下、物語の展開に触れています。
感想としては、だいぶキツかったです。
何度も一時停止して、深呼吸して、ちょっと観て…という感じでした。
露骨に残酷なシーンが多いわけではありません。
最初から全体的に「嫌な予感」しかしないんです。
恐らくその理由は「ルオンの視点」にあります。刻一刻と変わっていく自分の置かれる状況について大人からの細かい説明はありません。
それだけでなく、大人同士の会話も最低限しかありません。
「早くして」とか、「静かにしてて」、「大丈夫だから」などとしか言われません。
でも周りの空気が全く大丈夫じゃない。
その状況に観ているこっちが耐えられなくなるのです。
あとは、子供の順応性も観ていて辛いものがありました。
子供なのでどんな状況にも慣れ、ルオンは言われた通りの仕事や訓練を行います。
でも結局、空爆されるとそんな訓練はなんの役にも立たず、地雷だらけの森をただただ逃げるしかなくなります。
「新しいカンボジアを」と叫ぶけど、それって誰のためか考えたの?、と問いたくなります。
そういう虚しさや残酷さを伝えるという点では本当に良い映画だったと思います。
子供がメインになっている戦争映画もいくつか観てきましたが、私はかなり好き(というと言い方おかしいけど)なタイプでした。
女優のアンジェリーナ・ジョリーが監督した映画ということですが、すごい人ですね。
空から移動したり働いている市民を撮るようなカットがあるのですが、みんな同じ色に染めた服の効果もあって、大人も子供も関係なくアリのように見えたのが印象的でした。