世界の備忘録

歴史上の忘れたくない事件などをまとめていくブログです。

備忘録その26 ラティマ―虐殺(Lattimer Massacre)

突然ですが、みなさんはアメリカの州を空でいくつ言えますか?
私は絞り出して25個といったところでした。そのうちいくつか怪しかったけど…
 
その中で、一番初め(多分小学生の低学年の頃)に覚えた、というか耳についた州がありました。
ペンシルバニア州でした。
 

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ペンシルバニア州の位置
 
まぁ、シルバニアファミリーが大好きだったからなのですが…
それ以外にはこの事件を調べるまで身近に感じたことも、じっくり考えたこともない、たくさんあるうちの一つの州に過ぎませんでした。
 
 
今日はそんなペンシルバニア州での事件です。
 
 
1897年9月、ペンシルバニア州のルザーン郡というところで無抵抗の鉱夫19人が銃殺されました。
銃殺したのは、今より権力を持っていた保安官が組織した民警団。
 
銃殺されたのは全員がスラブ人やドイツ人の鉱夫でした。
 
この事件が起きた背景には何があったかというと、度重なる鉱夫たちのストライキがありました。
ストを起こしていたのはUMW(United Mine Workers)という鉱夫たちの組合です。
ストライキは賃金を上げることだけを要求したわけではなく、ケガをした場合に医者に診てもらえるようにするなどといった、当時の鉱夫たちの地位の低さが垣間見えるものでした。
 
一方スラブ人労働者たちは言葉の壁の問題などからUMWには加入していませんでしたが、ストが始まってから加入が進み、一緒にストライキなどを起こすようになりました。
 
 
一度は賃金を上げることを了解した雇用主たちでしたが、それも不公平なもので、またストライキが起きます。
 
9月10日、300~400人のデモ隊が保安官たちの解散命令を聞かずにデモを行います。
そこで、警官により発砲され、19人が死亡、けが人も多く出るという結果になりました。
しかも発砲は背後からだったということで、全く無抵抗の人々を撃った事件、ということが判明しました。
 
 
スラブ系を狙ったとか、そういうことではなさそうですが、多くの移民が低賃金で健康の補償もなく働くしかなく、その矢先に起こった事件と言えると思います。
 
この事件の後、UMWは加入者が増え、賃金値上げを訴える十分な力を得たといいます。
この事件をきっかけに鉱夫たちの地位が少しずつ変わってきた、そんな転機になる事件だった…とのことです。
 
 
その後この虐殺が起きた現場には特に何もなかったそうですが、1972年に小さな慰霊碑がたてられたそうです。